2014年W杯でドイツが勝ち進んだとき、うつむくクリスティアーノ・ロナウドやリオネル・メッシら対戦相手に歩み寄り、ハグしたり励ましたりしていたバスティアン・シュヴァインシュタイガーの姿を覚えている人は多いでしょう。
スイス『Blick』紙はこのたび、そんな同選手の優しさに心を動かされたという元審判員のコメントを伝えています。
ババク・ラファティ氏は2011年11月、ドイツ・ブンデスリーガのケルン対マインツ戦で主審を務める予定でしたが、前日にケルンのホテルで自殺を図ったそうです。
幸いにも同僚によって発見され、すぐに病院へ搬送されて一命をとりとめましたが、2014年にスティーヴ・チェルンドロの引退試合で小さなカムバックを果たすまで、審判員として働くことはできませんでした。
ラファティ氏は、現地時間26日付の『Blick』紙のロングインタビューで当時のことについて語り、病院で意識を取り戻したあともなお、自殺を考えていたと告白しました。
仕事の面で様々な理由から追い詰められ、うつ状態に陥っていたことも明かしましたが、自殺を図った責任そのものは自分にあると話したそうです。
記者から、現在DFB(ドイツサッカー連盟)とコンタクトを取っているかと問われると、ラファティ氏は「DFBからは一切何もありません。私のためにドアを開けているという話ですが、私からコンタクトを取れというのでしょうか」と答えました。
記者が「自殺未遂のあと、サッカー関係者で連絡してきた人は?」と尋ねると、「審判員全員です。それからバスティアン・シュヴァインシュタイガーから手紙をもらいました」と話しました。
ラファティ氏は「本当に感動しました。計算とか偽善とかそういうものではまったくありません。こんな事件のあと、私が笛を吹くことはもうないだろうと、彼は分かっていたのですね」と語りました。
その手紙には「ラファティさんへ。生きている間、人は何度も何度も転びますが、起き上がる回数はそれよりも多いはずです。あなたの幸運を祈っています」と綴られていたそうです。
「彼の思いやりは本当に素晴らしかった」と話したラファティ氏ですが、「うつ病は今もサッカー界ではタブーです。私は今、メンタルトレーナーとして、ブンデスリーガの3選手のケアをしています」と語っています。
ラファティ氏はもう自殺を考えることはないそうです。
「あのときはどうかしていたんです。人生は、自分で台無しにするには素晴らしすぎますよ」と最後に語っているということです。
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さすが、シュヴァ!