「もう還暦ではなく、まだ還暦という思いでおります」。天皇陛下は、60歳の誕生日に先立って行われた即位後初の記者会見で、笑顔でユーモアを交えながら今後の歩みへの意欲を示されたそうです。現行憲法下の象徴像を模索し続けた上皇ご夫妻に繰り返し言及しながらも、新たな活動のあり方を探る姿勢ものぞかせました。
会見は住まいの赤坂御所(東京都港区)で約40分間にわたって開かれたそうです。陛下が還暦を迎える受け止めを口にしたのは、「高齢での即位」を指摘する質問への回答でした。1月の大相撲初場所で初優勝した徳勝龍がインタビューで語った「もう33歳ではなく、まだ33歳だと思って頑張ります」との決意表明とも重なり、緊張感が漂う会見場は和やかな空気に包まれたそうです。
陛下は会見で「上皇、上皇后両陛下の歩みに思いを致す度に深い感謝と敬意の念を覚える」と、何度も上皇ご夫妻への敬意や感謝を語りました。上皇さまも天皇即位後初の会見(1989年8月)で「昭和天皇をはじめとする古くからの天皇に思いを致す」などと述べたが、当時は昭和天皇の戦争責任に絡む議論が活発な時代でした。
象徴天皇制を研究する河西秀哉・名古屋大大学院准教授は「昭和天皇への感謝や敬意を多く語るのは難しかったはず」と指摘したうえで、今回の会見について「平成に築かれた国民との良好な関係性を強く意識していると感じた」と話したそうです。
識者「互いに支え合う新しい天皇、皇后像を築いていくのでは」
陛下は、適応障害で療養しながらすべての即位行事に臨んだ皇后雅子さまへの感謝やねぎらいの言葉も重ねました。「私や愛子にも細かく心を配り、活動を支えてくれており、良き相談相手となってくれている。私もできる限り雅子の力になり、支えていきたい」とも。河西氏は「療養中という事情はあるにせよ、支えられるだけではなく、『支えていきたい』と明言したのが印象的だ。平成の時代は天皇を皇后が支える関係性だったが、互いに支え合うという新しい天皇、皇后像を築いていくのでは」と話したそうです。
令和の時代の天皇のあり方も会見のテーマの一つとなりました。陛下は「象徴としてあるべき姿を模索しながら務めを果たし、活動の方向性についても考えていきたい」と答えた。近現代史研究者で、明治以降の天皇の発言を分析する辻田真佐憲(まさのり)氏は「平成の基本は天皇と皇后の2人で各地に赴く『旅』だったが、今の皇后さまは体調の問題がある。(平成と)まったく同じ活動をするのは無理な中、対応を考慮している思いが表れている」と受け止めたそうです。
陛下は皇太子時代から子どもの貧困や虐待などの社会的問題への関心を示してきました。会見で、在日外国人やLGBTなど性的少数者らを巡る問題について問われると、「多様性に対して、寛容の心を持って受け入れていかなければいけない」と表現したそうです。辻田氏は「『多様性』や『寛容』に問題意識を持っているのだろう。現代的な問題にどう向き合うのか探りながら『令和流』を確立しようと考えているのではないか」と推し量ったということです。
天皇になっても相変わらずマイホームパパで、会見中「雅子」が13回、「愛子」が7回も出てきたそうですね
天皇誕生日の23日、60歳を迎えた天皇陛下は、皇居で皇后さまと即位後初の誕生日の祝賀行事に臨まれたそうです。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、一般参賀は中止となりました。
天皇陛下は午前中、皇居・宮殿で秋篠宮ご夫妻はじめ皇族方、三権の長らから祝賀を受けたそうです。午後には宮殿「豊明殿」で昼食を囲む「宴会の儀」があり、約450人が出席しました。
陛下は「誕生日に当たり、皆さんと祝宴を共にすることを誠にうれしく思います。この機会に国民の幸せと国の発展を願い、併せて皆さんの健勝を祈ります」とあいさつ。安倍晋三首相が代表でお祝いを述べたということです。