日本の首相として7年ぶりとなる安倍晋三首相の中国公式訪問はおおむね成功したといえます。中国の習近平国家主席、李克強首相らの熱烈な歓迎ムードに乗せられることなく、ウイグル族弾圧など中国の人権問題や、東シナ海・南シナ海での軍備拡張など懸念を率直にぶつけ、冷や水を浴びせたことは特筆に値します。中国の顔色ばかりをうかがってきた日中外交は転機を迎えています。
米中貿易戦争で経済的な打撃を受けている中国にとって、安倍首相とトランプ米大統領が対中外交でも足並みをそろえることだけは何とか避けたい。安倍首相が6年前に首相に返り咲いた後、徹底的に批判を続けてきた中国側が、手のひら返しで安倍首相を歓迎したのは、日米を離反させ、経済協力を引き出したいという思惑があったからです。
安倍首相はそれを見透かした上で、経済協力とてんびんにかけるように、懸念を率直にぶつけたそうです。
李首相に対しては、ウイグル族弾圧を念頭に「中国国内の人権状況について日本を含む国際社会が注視している」と直言しました。この時ばかりは李首相から笑顔が消え、渋い表情だったそうです。
習主席に、スパイの疑いで拘束されている邦人について「前向きな対応」を求めたことも大きい。習主席は「中国の法令に基づいて適切に対処する」と述べただけだが、トップ会談の議題に上がったことで事態は好転する可能性が出てきたまし。
安倍首相が習主席、李首相それぞれに提起し、同意を得た3つのコンセプトにも大きな意味があります。
「競争から協調へ」「脅威ではなくパートナー」「自由で公正な貿易体制の発展」-。安倍首相は「新3原則」と名付け、「これからの日中関係の道しるべとなる」としました。今後、中国が、「脅威」となる行動を取ったり、自由・公正な貿易を阻もうとした場合、この新3原則が「錦の御旗」となりえるからです。
一方、安倍首相の思うように進まなかった案件もあるそうです。東シナ海でのガス田共同開発もその一つ。日中両政府は、日中の境界線画定までの措置として、平成20年に共同開発する方針で合意しながら、交渉は止まったままとなっているということです。
来日中の在外ウイグル人組織「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル前議長は26日、東京都内で記者会見し、同日に中国首脳と北京で会談した安倍晋三首相に書簡を送ったことを明らかにしたそうです。書簡で「(中国の収容施設に入れられている)ウイグル人を即座に釈放するよう中国政府に要求してほしい」と求めました。
安倍首相の世界での発言力が高まってきていますよね!