カナダ・ケベック州で8日から2日間の日程で開かれた主要7か国(G7)首脳会議(サミット)で撮影された5枚の公式写真は5つの違った物語を表していたそうです。
トランプ氏と、それ以外の6ヵ国の立場が激しく対立し、「G6+1」とまで呼ばれた今回のG7。
同じ場面を収めた写真でも、各国の政府や首脳が発表した構図の微妙な違いを見比べると、その絵柄を選んだ意図が、どことなく浮かんできます。
最初に会議の様子を外部に伝えたのは、米国のサラ・サンダース大統領報道官が午前10時45分(日本時間午後5時45分)に公開した会議室内の写真だったそうです。
この写真でドナルド・トランプ米大統領は、落ち着いた様子で正面を見て、自信に満ちたたたずまいで腕を組んで椅子の背もたれに寄り掛かり、ほとんど嫌みを言っているような疑り深い態度で、懇願しているかのようにトランプ氏に向かって体を傾けている他の首脳らをはねつけるようなそぶりを見せています。
10分後、フランス大統領府が同じ瞬間を別の角度から撮影した写真を公開。この写真ではエマニュエル・マクロン仏大統領がジェスチャーを見せながらトランプ氏と交渉し、他の首脳らは魅了されたようにマクロン氏を凝視している。しかしアンゲラ・メルケル独首相の顔は手前にいる人物の頭で隠れています。
これは良くないと思ったのかメルケル氏の報道チームは大技を繰り出しました。「世界報道写真」コンテストの受賞歴があり、現在はドイツ政府の公式カメラマンとして活動しているイェスコ・デンツェル氏が撮影した写真では、テーブルに両手を突いたメルケル氏が、緊張して無言で見上げているようなトランプ氏に迫っています。マクロン氏の顔は別の人物の顔に隠れ、英国のテリーザ・メイ首相の顔はほぼ完全に見えません。
ドイツ政府が公開したこの写真はインターネット上で拡散し、オリジナルと同一の写真、もしくはユーモアや風刺のために加工された写真がソーシャルメディアを飛び交ったそうです。
イタリアのジュゼッペ・コンテ首相はまだ就任から3日もたっていないことを反映するかのように、写真でも控え目な後ろ姿を見せていました。
最後にホスト国のカナダは午後2時(日本時間同9時)すぎに、他の首脳らと共に会議室にいるジャスティン・トルドー首相が横から撮影された写真を公開しました。この写真は今年のG7議長国であり、また伝統的に平和維持活動に尽力してきたカナダにふさわしく、トランプ氏と他の首脳を対等な存在として公平に捉えていmす。
この写真では鋭いが父親のような視線を投げかけているトルドー氏の下で、全首脳が協力して意見の違いを乗り越えようとしているように見えるということです。
すごいですね!
ホワイトハウスのソーシャルメディア部長、ダン・スカビーノ氏が選んだのは、笑顔のトランプ氏の言葉を各国の指導者が笑顔を浮かべて聞いているように見える写真。
各国の中心にいるのは、あくまで米国だということだろうか。

マクロン仏大統領は、同じ場面を違う角度から撮った写真を。中心はマクロン氏で、みんながマクロン氏に聞き入るかのような構図。トランプ氏とメルケル氏は顔が隠れていて表情が分からない。

ドイツ政府の公式インスタ写真は、トランプ氏に詰め寄る風
ドイツ首相府の公式インスタグラムでは、厳しい表情のメルケル独首相が、憮然とした表情のトランプ氏に詰め寄っているように見える。
欧州の中軸を自負するメルケル氏が、欧州の総意を背景にトランプ氏と向き合うという印象を受ける。
米国と欧州の橋渡し役を自認していた安倍首相は、腕組みをして欧州側の様子を見ているような感じになっている。
カナダ政府の提供写真はほのぼの系
カナダ首相府がメディアに提供した写真では、安倍首相が消えてメルケル氏の後ろに笑顔のトルドー氏が。メルケル氏の表情も柔らかく、ほのぼのとした雰囲気に。G7主催国として「成功」「調和」をアピールしたいという意図がどことなく見えてくる。
G7直前にトランプ氏と会談した安倍首相の公式インスタグラムでは、むしろトランプ氏の言葉に、メルケル氏と安倍氏が耳を傾けているような構図になる。
トランプ氏の視線が、メルケル氏に向けられていないのが分かる。